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March 26, 2006

「南極物語(2005)」感想。

作品の評価:☆☆☆
好き度:☆☆☆

→見る前のコメント。
うーん、生ぬるいね~。ぬる燗です。
一応、泣かされるつもりで見に行ったのですが、
いかにもディズニーらしい前向きさとご都合主義と
現実とかけ離れたファンタジーに引いてしまい、
途中ですっかり醒めてしまいました。

これが実話ベースでない、全くのオリジナル脚本だったら
全然問題ないんですけどね。ああ、ディズニーやなあ~と
思うだけで。甘かろうがぬるかろうが、
好きにやって下さって結構なんですけど。
でも重い実話を明るい話に改変してしまって、
現実に命を失って行った犬たちの存在を無視することって
何だか彼らへの冒涜に感じてしまうんですよ。

もしアメリカで新撰組的映画が作られたとして、
「これは現実の事件にインスパイアされて
製作されたオリジナル映画です」とかって、
近藤さんや土方さんにあたる登場人物が
爽やか~☆に生き残ってたら、なんかヤでしょ?
彼らの生き様・死に様、どうしてくれるんじゃー!
って思いませんか。

まあディズニー映画の能天気さなんて
最初から予想の範囲内だから、
何とか自分を素直な心に誘導しようと頑張ってみたら
最後にようやくじんわり涙が滲んでは来たものの、
期待していたような号泣にはほど遠かったです。
泣けなかった欲求不満が体中にくすぶっております。

だって、南極の過酷な自然の中で、
犬達が生き残るために必死に頑張っている
健気な姿を見られるのかな?と思っていたら、
ブリザードに吹かれながら雪の中でぐーぐー寝てるか
さんさんと明るい太陽の光が降り注ぐ中、
ご飯獲ってモグモグ食べてるかしてる内に
あっさり半年も経ってしまってビックリですよ!
まあ多少はドラマっぽい場面もあったものの、
犬より人間の方が酷い目に遭ってる気がしてなりません。

えーと、25年に一度の大嵐っていうのは一体・・?
人間たちが近寄れもしないくらいひどい嵐の中、
それから最も厳しい南極の冬という時期にも関わらず、
犬たちがほとんど無事って、あんたらひょっとして
南極の環境に適応してるんじゃないの・・?
そのままずっと暮らして行けちゃうんじゃん?
と思ってしまいました。「犬って頑丈な生き物なんだなあ!」
って、ある意味感動したけど、そういう話じゃないよねえ。

まあ、犬が可愛いから何でもいいんですけどね!
ああ、ふかふかのお利口さんたち・・。可愛い、可愛いー。
でっかくて可愛いー。馬鹿な子も可愛いー。演技してるー。
8匹それぞれ、見た目にも性格にも個性があって
良かったです。皆似たような大きさかと思ってたら、
並んでみたら体格もかなり違ってました。

これがもし、日本版「南極物語」のような
小柄な樺太犬とかだったら、192cmもあるような
欧米人に飛び付いたって全然絵にならないので、
ハスキー&マラミュートで正解ですね。
樺太犬だったら30匹くらい要りそうだ。
(ところでポール・ウォーカーの公称192cmは
絶対ウソだと思う。いいとこ188cmだな。)

でも、置いて行かれた後、犬たちがバラバラになって
それぞれにエピソードやドラマが用意されているのかと
思ったら、案外集団行動の場面が多かったです。
仲良しさんなのねえ。なので地味だった何匹かは
名前と顔が一致しないまま終わってしまいました。
もっと1匹1匹をガッツリフィーチャーして欲しかったなあ。

ストーリーも、どっちかというと犬よりも
犬を置いて来てしまった人間の苦しみや悲しみ、
それを乗り越えようと努力する姿や仲間たちとの絆を
メインに据えて時間を割いていたみたいだけど、
その辺はハッキリ言ってどうでも良かったです。
ありきたりだし、どうせディズニー映画で
そんなに深く描けるはずもないんだから、
それよりもっと犬たちと南極の峻厳とした風景を
じっくり見たかったなーという気分でした。

良かったのは主人公ジェリーを演じた
ポール・ウォーカーね!!超当たり役です!
ああ、ほんとに犬好きだよ、この人!!
犬を触る手付きや話し掛け方に全然違和感がなかった。
ソリに乗ってる姿も自然で、さすがスポーツマン!
トラブったときの行動なんかも落ち着いてて
精悍で有能なガイドに見えました。

脇役のお調子者や博士も
キャラは類型的ですが普通に良かった。
主人公の元恋人はあんま犬好きに見えない、
というか、犬好きじゃなかったのが個人的には
残念でした。犬を置いて来たことに苦しむジェリーを
上からの目線で力強く励ましてるけど、
もっと一緒に悲しんであげて欲しかったな。

まあ犬好きさんなら見て損はなし!!
そして、今までずっとヘボいと思ってた
ポール・ウォーカーの評価が一気に上がりました!
犬&ポール鑑賞映画だと思って臨むと良いです。

【以下、ネタバレ&ツッコミ注意!!】
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うーん、生き残った犬って、現実では15匹中2匹で、
それだって2匹も生き残ったこと自体が奇跡だ!
ということで深い感動を呼んだのに、
8匹中6匹ってどーなのよ・・。ディズニー・・。
生存率13.3%が一気に75%ですよ!すげー。
おとぎ話じゃないんだから、せめて半分くらいにしとこうよ・・。
まあ、こりゃ下手すると8匹全部生き残るわ!
と心配してたのでそれよりはマシでしたけど。

ディズニーはマジで「一匹も犬を殺すな」と、
それって「南極」での物語じゃないよね?
という物凄い要望を出して来たらしいので、
何とか折り合いを付けてドラマらしくするために
苦戦したらしいですね。だったらいっそ、
まんまカナダの山奥にでもすれば?って感じですけど。

マヤとマックスは新旧リーダーで主役だから
当然生き残るんだろうなと思ったけど、
その他の子はもういいですって!
クレバス落ちに1匹とアザラシ食われ1匹は
必須でお願いしたかったです。あーガックリ。

それにしても、あのヒョウアザラシはヤバ過ぎです!
いやー、あんな化物が南極にいるなんて。
皆の「可愛いアザラシちゃん」幻想を
軽く打ち砕いてくれますね!!いいぞー!

あいつがシャチの中からガバッと出て来たときは
あまりに予想外でホラー映画よりギクッとさせられました。
水中を泳ぎながら、マックスの影を追って来るシーンは
綺麗で怖くて、そのまま氷を割ってドバーン!ガーッ!
とやってくれるかと思ってドキドキしていたのに、
とんだ肩透かしですよ!だったらもう、
オリジナルを完全に無視してくれればいいのに、
近付けておいて、結果だけ変えるっていうのは最悪です。

結局、死んだのって、10歳の老犬オールドジャックと、
お調子者の双子の片割れだけでしょう。
ジャックは老いてて鎖を切れないという理由があるから
まあなんか安楽死的な感じでそんな悲しくないし、
そして、ふざけまわって谷を落ちたアイツも
なんか自業自得っぽくて仕方ないかなって。
何も悪いことしてないのに死んでく空しさとか
不条理さなんて、ディズニー映画には存在しないんですよね。

ディズニーからの指令とはまた別に、
「リアルに描きたいけど、法律で動物をケガさせたり、
観客に動物がケガをしたと思わせたりするような
ことがあってはならない」という理由もあるみたいだから、
スタッフたちには仕方のないことなんでしょうが。

そりゃねえ、犬が怪我をしかねないような
危ない撮影はどうかと思いますよ?
人間の俳優だって、しょっちゅう撮影中に怪我してるけど、
彼らは自分で納得してやってることだしね。
あくまで「やらされてる」犬たちに
危ないことをさせるのが嫌なのは分かる。

でも、映画の中でいくら犬が死のうが
怪我して見えようが所詮映画じゃん。フィクションじゃん。
すでに事実として存在してしまっている話を変えて、
フィクションの世界にまで手加減を加えてやらなきゃ
ならないなんて、どんだけ傷つき易いんですかね?
幼いお子さんたちや良識派の皆さん方は。
映画の中で犬を殺すぐらいだったら、
やっぱ人間殺した方が問題ないんだろうなあ。

「犬たちを犠牲にすることで感動を得るよりも、
もっと元気が出るようなストーリーを目指した。
実際に起きた話ではなくて、前向きで気持ちが
高揚するようなストーリーを語りたかった」
っていうのが監督のお言葉だけど、
あーた、「生きてこそ」でその真逆の映画撮ってたくせに・・。
ひたすら暗くてへこんだよ。だからもういいってことか?

【4月8日追記】

あと引っ掛かっているのは、「犬を生かしたか殺したか」
ということよりも、「事実を改変したフィクションを作ること」
の怖さなんですよ。さっき新撰組を例に挙げたけど、例えば、
現実に起きた戦争を題材にしたフィクション映画を作って、
15万人が死亡したという事実を3万人に変更したら
これは大問題ですよね?

まあそんなことしたら大変な騒ぎになるだろうし、
苦情が来るのは必死なので誰もやらないでしょうけど、
もしもそういう映画が作られたとしたら、
見た人は失われた命が3万人だと思うでしょうし、
それをきっかけに勉強して正しい事実を知ろうとする人以外は、
いくらフィクションだといっても、事実を元にしている作品だと
聞いたら、そういうものかと思い込んでしまう可能性も
あると思うんですよ。そうすると、彼らの中で、
現実に失われた12万人の命というのは「なかったこと」に
なってしまいませんか。(ちなみに15万人というのは
長崎での原爆死亡者数です。)

人間の歴史的大事件と犬15匹の話じゃ
レベルも数も違い過ぎると言われるかもしれないけど、
例えば保険所で処分される犬猫を主役にした
映画だったら?実際は沢山の犬猫が処分されているのに
8匹が幸運にも助かるという愛と勇気の冒険ストーリーを
作ってみたらどうでしょう。子供達や観客に
その陰には死んで行った犬たちが沢山いるのだ、という
現実の処分数を伝えなくても許されるんでしょうか。

「犬たちを犠牲にすることで感動を得るよりも、
もっと元気が出るようなストーリーを目指した。
実際に起きた話ではなくて、前向きで気持ちが
高揚するようなストーリーを語りたかった」からそうした、
と言われたら納得出来ますか。

それに、アメリカで1年間に処分される犬猫の数って
400万匹~500万匹でしたっけ?
日本の約10倍と言われていたかと思います。
そういう現実があるのに、南極で死んだ犬13匹分の
悲しみを2匹分に減らしたところで、だから一体何なのさ!
という気分になります。死の事実は事実だし。

そもそも、midoroは現実を無視した一方的な動物愛護や
愛玩動物愛護、もしくは知的(?)動物愛護というものに
反感を持っているような、人様から後ろ指を指される
類の人間なので、何で犬や一部の動物たちだけが
それほど優遇されるのかが全然分かりません。
そりゃmidoroだって、犬猫のようなコミュニケーションの
取りやすい動物は可愛いし好きだし死んでたら傷付くし
悲しいし泣くけど、それはそれ、これはこれ、と思ってしまう。

そういう考えを持つ人間が、ある意味対極である
ディズニーの全年齢向け娯楽作品「南極物語」を見て
ねちっこく追及なんてせんでも、とは思うけど、
シチュエーションや数の多寡はともかくとして、
実際に起こった暗くて惨い事実から目を背け、
臭いものに蓋をしろ的な明るい前向きさで
隠蔽してしまうことって、ものすごく独善的な思想に
感じられて苦手なのです。それがディズニーの
売りなんだから、だったら最初から見なきゃ
いいんでしょうけど。でも犬見たかったし。

だから、せめてエンドロールの最後に
「To the Memory of 13 dogs lie in the Antarctic.」
という一言でもあったらなあと思ってしまいます。
「犬たちの勇敢さを称えるためにこの映画をつくった」
なんて明るい献辞出してる場合じゃないよ。ったく。

事実を変更した箇所が一体どこなのか、
一番大事なところを明白にしてくれてさえいれば、
そしたらもう、これは子供向けにたいへんソフトに
作られた別物、ファンタジー作品だってことで
割り切りますけどね。

【追記終わり】

とりあえず自分は日本版の南極物語を見て
そのとき流した涙のことや死んだ犬たちのことは、
20年経っても忘れられませんが、
この映画に出て来た犬たちのことは
多分すぐ忘れちゃいますね。なんせ前向きだし!

あと疑問なのは、主人公以外の皆が皆、
8匹の犬を置いて来るのはしょうがない、
ってすっかりあきらめちゃってるところね。
舞台は1993年のお話になっているのに、
最近のアメリカで「犬たちを救おう!」っていう
運動が起こらないなんて考えられないよ!
動物愛護団体やマスコミがこんな美味しいネタを
見逃すとは思えません。すぐ全国からカンパ集まるって。

実際、日本人が犬を置いて来たとき、
世界中から非難されたんでしょう?
犬を置いて来るくらいならお前が死ね!ぐらいの。
なのにアメリカでそんな非犬道的なことが
行われるのが許されるとは思えません。

この映画を見て、「こんな酷いことが
本当にあったんですって!?信じられない!
Oh, My God !」とかって思ったアメリカ人が、
日本の南極物語のことを調べたりして、
15匹中2匹しか助からなかったってことを知ったら、
卒倒すると思います。日本人、悪魔ですね。ハハ。
ま、調べてくれた方がこっちは嬉しいんですけど。

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Comments

>ともみん様

やっぱり犬好きさんや実際に犬を飼ってらっしゃる方の思い入れというのは、全然違うものなのでしょうね。特に大型犬だと、愛玩動物というより、人間のパートナーだという感じが更に強くなるでしょうし。

マヤは凄かったですね!足の引き摺りは、一体どうやって演技してたんでしょう。ほんと、撮影風景やメイキングの方がむしろ見たいです。犬たちの無事を確認して安心して下さい!

>#104様

ポール・ウォーカー、どう見ても大型犬タイプですよね。犬たちからもきっと仲間だと思われていたことでしょう。
でも飼ってた犬の「ゼロ」は脳味噌ゼロで使えなかったので友達にあげちゃった、とかサラリとひどいこと言ってました。

>「ポール・ウォーカーが改造車から犬ぞりに乗換えた!
>南極を舞台にハスキー犬達と全年齢版ワイルドスピード!」
これ、いいですね!最初からこういう能天気なコンセプトの映画だったらまだ分かります。

>年齢制限がかかっていたくらい
日本版だとPG-12でしたっけ?無菌培養で囲い込まれるアメリカの子供たちの将来を憂えましたが、サウスパークを見てたら心が和みました。ディズニーの夢物語の世界は本当に素敵だけど、大きくなったらいろんなものを見て、厳しい現実も知ってくれるといいなと個人的には思います。

Posted by: midoro | April 06, 2006 at 00:39

非犬道的って表現、まあ犬だからそう言えばそうなんですが
なんか笑いが込みあげてくる言葉ですね。

もうポール・ウォーカー自身が
キャラクター的にハスキーや狼犬という感じなんで
犬達と触れ合う姿が特に違和感無く、
むしろ同類のようになじんだ感じがしましたね。

ディズニー映画の割には
これでも過去にないくらいシビアだとは思いますよ。
むしろ日本版が向こうでは内容に問題が有るとして、
年齢制限がかかっていたくらいですから、
アメリカで全年齢で公開するなら
このくらいしか無かったんだろうかなぁと思われます。

「ポール・ウォーカーが改造車から犬ぞりに乗換えた!
南極を舞台にハスキー犬達と全年齢版ワイルドスピード!」
という雑誌の見出しがアメリカの方でありましたが
言われてみれば南極物語というよりも
こちらの方が何となく適切かも。。。

ふかふかのハスキー大好きで
ポール・ウォーカーも目当てな人としては
満足のいく内容じゃないでしょうか。

Posted by: #104 | April 05, 2006 at 23:14

midoroさんも、ご覧になったんですね~。
私はもう、ディズニーと一緒で、犬は一匹も殺すなーって思ってしまいました(^^;
ハスキー、大好きなんです。
人種差別はうるさいのに、犬種差別は良いのか私!?って感じなくらい、ハスキーが出てくると弱いですね。
マヤちゃん、怪我して無いのに足引きずれるの?
まさか、本当に怪我させたんじゃないでしょうねーなんて。
ちょっと病的に犬の肩を持ちすぎて、見なきゃ良かったと後悔したくらいです(笑)

Posted by: ともみん | April 03, 2006 at 22:27

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